復興の遅れ:復旧・復興工事を阻む入札不調

最終更新日:2012年12月1日。
※ 復興JVの活用状況を追記。ほとんど活用されてない実態が判明。

復旧・復興工事の需要が大幅に増加するなか、工事が遅れる大きな
要因となっている入札不調についてです。

※ 入札不調
  入札者がいない、または予定価格を下回る金額の入札がなかったため、
  入札行為を中止することです。

 
 
入札不調の現状と事例

入札不調の原因

入札不調への対策

 
 
 
入札不調の現状と事例

 2011年度の後半から本格的に増えてきた復興事業。予算が執行されれば
 順調に工事が進むと思いきや、そうではない現状についです。

 近年の公共工事の減少に伴い、人員整理等、経営の合理化を迫られていた建設業界。
 そんな中での復興工事はあまりに規模が大きすぎ、業者が対応できない事態が
 発生しています。

 宮城県では2012年度に入り、不調に終わったのは発注価格別では1000万~1億円は
 43%。2011年度は1年間は28%。3億円以上の39件は全て落札されてる状況です。

 しかし、1億円未満の小規模工事が敬遠されてきた2011年度と比べて、2012年度
 からは1億円以上の工事の不調も、2011年度の10%から2012年度は20%と増加。
 発注価格が高い工事にまで、入札不調で工事が遅れる事態が増加しています。
 
 
 ※ 宮城県契約課によると、不調となった入札は条件を変えて再入札を行い、
   大半が落札されるとのこと。
 参考:河北新報(2012/8/30)
 参考:毎日新聞(2012/10/29)

 
 以下は宮城県沿岸部市町村の2011年度と2012年度8月末までの入札全体に対する
 不調の割合です。

     2012年度 2011年度
 仙台市: 30.2% 32.0%
 石巻市: 49.5% 19.3%
 塩竃市: 19.1% 18.0%
 気仙沼市:24.2% 34.3%
 名取市: 27.1% 25.8%
 多賀城市:17.5% 8.8%
 岩沼市: 10.9% 12.3%
 東松島市: 3.8% 7.6%
 亘理町    0% 1.3%
 山元町:   0% 2.6%
 松島町: 24.0% 20.4%
 七ヶ浜町:16.7%  2.8%
 利府町:   0% 3.3%
 女川町: 12.5%  0%
 南三陸町: 6.3%  0%
 引用:河北新報(2012/10/23)

 また国土交通省が岩手、宮城、福島の被災3県と仙台市が4?8月に発注した
 公共工事の入札を調査した結果は次の通りです。
 入札不調の割合は、仙台市が47%(96件)と最も高く、宮城県34%(87件)
 福島県20%(99件)岩手県7%(19件)。9月も同水準が継続しています。
 参考:毎日新聞(2012/10/29)

 
 
 入札不調の事例

 入札不調が発生した復旧・復興事業の実例の紹介です。
 
 
  陸前高田市の小中学校2校の災害復旧工事
   ・入札へ参加予定だった8社が「複数の工事を抱えて手が回らない」と全社辞退。
   参考:岩手日報(2012/9/29)

  県沿岸広域振興局・大船渡地域振興センター管内の公共事業
   ・2012年9月11日までに予定していた公共事業58件中13件で、入札に参加した
    業者がゼロ。
   参考:毎日新聞(2012/9/23)

  気仙沼市、漁港整備の工事
   ・2012年8月末に入札がありましたが、8件中6件で応札者なし。
   参考:河北新報(2012/9/22)

  大船渡市、災害公営住宅として利用する雇用促進住宅の改修工事
   ・2012年8月下旬に入札を予定するも、指名の建設会社10社が全て辞退。
    災害公営住宅への入居時期が2ヶ月遅れる結果に。
   参考:岩手日報(2012/9/24)

 
入札不調の原因

 震災前と比べてあまりに多い入札不調。入札を辞退する業者側の見解を
 掲載している記事の紹介です。

 宮城県は(2012年)7~8月、県内29社を対象に不調に関する実態調査を実施。
 原因として、業者の多くが専門的な技術者や労働者の不足、人件費や原材料の
 単価の上昇を挙げた。
 引用:河北新報(2012/8/30)

 (福島)県内建設業は震災前まで長年、続いてきた公共工事の縮減により、
 業者数、就業者数ともに減少傾向が続き、突然の需要拡大に対応できて
 いないとみられる。
 引用:福島民報(2012/6/23)

 ある建設会社の関係者は「うまみがない(利益率が低い)」と明かす。
 「協力はしたいが事業規模の小さな改修工事はもうからない。人手も足りない今は、
 がれき選別や民間の仕事の方が得」だという。
 引用:毎日新聞(2012/9/23)

 
 
入札不調への対策

 入札不調が多発する中、政府、自治体、民間企業等が解消に向けて
 人材不足解消に向けた支援制度の創設、作業員の宿泊施設の確保、従来制度の
 一部改正等に取り組んでいます。

 
 
 人材不足(技術者不足)への対応

  大幅に増加した復興工事への人員不足に対応するため、国土交通省は
  被災地域の企業と被災地域外の企業が共同企業体(JV)を組み、入札に
  参加できる復興JV制度を2012年2月に創設。

  従来は地元企業のみ参加できる入札に関して、被災地域外の建設企業と
  被災地域の建設企業がJVを組んで事業を請け負い、技術者不足を補う狙いです。
  参考:国土交通省(復興JV制度について)
 
 
  岩手県の復興JVの運用
   予定価格が2500万円以上5億円未満工事で、土木工事、建築一式工事、
   舗装工事、防水工事等、全19業種を対象に復興JVを2012年8月以後導入。
   ただし復興JVの構成企業は県内業者に限定。

 
  宮城県の復興JVの運用
   年10月15日以降発注する工事で、復興JVが入札できる対象工事を拡大。

  ・復興JVが入札可能だった事業費を1~5億円から3000万~19億4000万円に拡大。
  ・従来の土木一式と舗装の2工事種別に加え、建築でも入札可能に。
  ・1社が登録可能だった復興JVの制限を2から3に緩和。
  参考:読売新聞(2012/10/2)、朝日新聞(2012/10/3)

 
   宮城県の復興JVに関する詳細はこちら(県HP)
   岩手県の復興JVに関する詳細はこちら(県HP)
   福島県は県発注の工事は地元業者にと復興JVを見送り。

 
  復興JVの活用状況
   国土交通省のまとめで、今年度から導入された復興JVが活用された工事は
   わずか4件、発注件数の1%にも満たない状況が判明。
   参考:読売新聞(2012/11/25)

 
  入札不調の原因の1つである技術者不足を解消するため、復興JVの導入や、
  対象となる工事種別、事業費、登録制限等の緩和が徐々に進んでいる状況です。
 
  また、違う工事であっても現場の距離が5km以内であり、同一の建設会社
  であれば専任の主任技術者の兼任を可能にするなど、技術者の配置基準の
  緩和にも取り組んでいます。
  参考:国土交通省(主任技術者の専任について)

  しかし復興JVの活用状況が表しているように、対策が期待するほど効果を出して
  おらず、さらなる改善策が求められている状況です。

 
 
 作業員の宿泊施設確保へ
 
  人員不足の背景には全国から集まる工事関係者に対し被災地での宿泊施設
  不足の問題もあります。
  津波被災によって被災地の宿泊施設の多くが休業、廃業し、民間賃貸住宅も
  みなし仮設として被災者が利用しているためです。

  そのため長期滞在となる復旧・復興作業員の宿泊施設を支援する動きもあります。

 
  宿泊施設支援の事例

   リース大手のオリックスは岩手、宮城両県の沿岸に計10棟のビジネスホテルを
   建設。工期の短い工法を採用し、本年度中に全て完成させ被災地の宿泊施設の
   需要に対応へ。
   参考:河北新報(2012/9/11)

   陸前高田市は被災した矢作小学校を改修し、被災者の生活支援などに当たっている
   ボランティアや復旧工事関係者が当面無料で利用できるようにしています。
   参考:陸前高田市災害ボランティアセンター(2012/8/17)岩手日報(2012/2/23)

   南相馬市では中小企業基盤整備機構が仮設宿泊施設「ホテル叶や」を整備。
   2012年8月17日にオープン。中小機構が被災地で仮設宿泊施設を整備するのは初。
   参考:福島民報(2012/8/18)
  
   南相馬市は2012年6月、復興事業に携わる企業が作業員向けの住宅を
   整備する場合、一戸50万円を上限に建設費の10%を補助する方針を決め、
   1億円の補正予算を計上。
   引用:河北新報(2012/7/17)

   再開した宿泊施設が当面は復興作業員に限定するほか、大手企業による
   宿泊施設の建設、自治体による資金補助、被災公的施設の転用など、
   各種支援の動きが広まっています。

 
 
  労務単価、原材料費高騰への対策

   国土交通省は高騰する人件費に対応するため公共工事発注の労務単価の
   見直しも行っています。

   毎年10月に行われていた公共工事の予定価格に反映される労務単価。
   これを最新月の実態を反映するべく、基準となる労務単価に乗じる
   補正係数を建設会社等へのアンケートより算出。2012年2月から実施中。
   参考:国土交通省(主任技術者の専任について)

 
   岩手県では県発注の公共工事で、契約後に最新の資材単価を反映して、
   工事費の変更を認める新たな運用基準を2012年8月より設けています。

   工事費を決める設計段階から契約までに一般的な工事で約半年の期間が
   開くことが有り、その間の原材料費の高騰に対応するためです。
   参考:毎日新聞(2012/9/8)

   対策が追いつかない人件費の高騰

   宮城県は2月、労務単価を1日1万1100円から1万1800円に増額。
   しかし、県建設業協会の調査では実際の単価は1万3000?1万4000円。
   石巻市の担当者は「県が現状を調査する間のタイムラグがあり、
   後追いになっている」と指摘する。
   引用:毎日新聞(2012/10/29)

 
 
  人員増加や設備投資は慎重

   技術者の配置基準の緩和、人件費、原材料費の実態を反映した施策でも
   中々効果が表れない現状。その背景には、復旧・復興工事は一時的であり
   近年の公共工事の減少による建設業界の不況のため、今後の経営を考慮して
   人員増加、設備投資にためらう業者が多いことが挙げられます。
 
   (福島県)会津地方の建設業者は「3~5年で仕事が減る。新たな設備投資や
   人員確保はリスクが大きい」と話す。
   引用:福島民報(2012/6/23)

   宮城県は「現場では原材料確保が難しく、運搬車両も足りない。
   復興後の経営を考えると、人員を増やしにくいようだ」と分析。
   引用:河北新報(2012/8/30)

 

  

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