復興の遅れ:埋蔵文化財の調査で遅れる工事の着工

最終更新日:2012/11/20
※ 記事投稿

災害公営住宅整備事業、防災集団移転促進事業、復興道路の整備等、
土地造成にあたり土木工事が必要となる復興工事が、埋蔵文化財の
影響を受けて着工が遅れる事態が発生しています。

このページでは埋蔵文化財が工事に与える影響と、今後の展開について
随時、追加・更新しながら追っていきます。

 
 
工事と埋蔵文化財の関係について

発掘調査の期間と復興工事への影響

埋蔵文化財が事業に影響する事例

発掘期間の短縮へ

 
 
 
工事と埋蔵文化財の関係について
 埋蔵文化財の復興工事への影響を説明する前に、日本で土木工事をする際の
 手続きについて簡単に紹介します。

 日本では掘削を伴う土木工事等の開発事業を行う際、工事区域又は隣接地に
 埋蔵文化財がないか(遺跡がないか)教育委員会が保存する遺跡地図を照会
 する必要があります。

 ※ 埋蔵文化財とは
 土地に埋もれている文化財を「埋蔵文化財」と呼び、遺構(住居跡・古墳など)と
 遺物(土器・石器など)のことを指します。この埋蔵文化財が埋もれている土地を
 「埋蔵文化財包蔵地」(遺跡)と呼びます。

 埋蔵文化財包蔵地(遺跡)は、教育委員会が実施する遺跡の分布調査や
 試堀調査により随時登録されています。

 最新の遺跡分布地図を元に、工事区域又は隣接地に遺跡が存在する場合は試掘
 調査を行い、その結果を教育委員会に報告する必要があります。

 試掘調査の結果、埋蔵文化財が発見された場合は、文化庁長官(主に県教育長)
 に工事着工の60日前に届出をし、指示を仰ぐことが文化財保護法によって
 規定されています。

 指示内容は主に1:発掘調査、2:工事立会、3:慎重工事、4:工事中止で現状
 保存となります。

 
 
発掘調査の期間と復興工事への影響
 ここから本題なのですが、復興道路や防災集団移転事業等、復興工事に係る東北の
 山林の土地には、未調査の遺跡が多数確認されています。

 そのため、本格的な発掘調査が必要となるケースが多く、発掘専門職員の不足や
 発掘による復興工事の遅れが問題となっています。

 
  岩手県の遺跡数
  岩手県内には縄文時代や古代を中心に1万2505か所の遺跡があり、沿岸の
  12市町村では3635か所が確認。
  参考:読売新聞(2012/11/14)

  
  発掘期間は遺跡の規模次第
  宮城県教委文化財保護課は「数軒程度の小さな集落なら1カ月程度で終わるし、
  比較的規模の大きい館なら最長2年かかったときもある。こればかりは掘って
  みないと分からない」と説明する。
  引用:河北新報(2012/3/21)

 
 
埋蔵文化財が事業に影響する事例

 実際に東北沿岸部の復興工事において、遺跡が確認されているため調査が
 必要となり、工事に影響がでている事例を紹介します。

  
  多賀城市
  復興道路の一部として整備予定の多賀城インターチェンジ付近にある「山王遺跡」で
  発掘調査が必要。
  参考:河北新報(2012/3/27)

 
  南三陸町
  複数の集団移転候補先から中世戦国時代の館跡などの遺跡が見つかり用地選定が難航。
  参考:河北新報(2012/3/21)

 
  大船渡市
  大 渡市の越喜来湾に程近い高台にある縄文中期の集落跡。集団移転の候補先と
  なっており、発掘調査の早期完了に被災者の方は気をもんでいます。
  参考:読売新聞(2012/11/14)

 
  山田町
  佐藤町長「(集団移転候補地の)高台に埋蔵文化財があり、発掘調査をしなくて
  はならない。調査員が足りず、復旧・復興に大きな障害となっている」
  引用:河北新報(2012/9/7)

 
  野田村
  野田村野田の南浜高台団地の集団移転の造成予定地。10月の試掘で縄文時代の
  ものとみられる狩猟のための落とし穴跡や、平安時代のものとみられる竪穴
  住居跡が発見。11月7日より急ピッチで発掘調査が開始されてます。
  参考:岩手日報(2012/11/8)

 
  批判の一方、調査必要との声も
  本格的な発掘調査を必要とする場合は時間がかかるため、今生きている人間と
  大昔の遺跡のどちらが大事なんだと批判の声もあります。しかし、有識者からは
  調査の意義を訴える声も上がっています。

 
  専門家からは「過去の津波災害で高台に移った形跡など、学術的に有益な遺跡がある
  可能性もある。住宅建設を急ぐ必要性は理解するが、きちんとした調査も必要だ」
  との声もある。
  引用:河北新報(2012/3/21)

 
  発掘調査が復興の足かせになっていると見る風潮もあるが、(岩手)県教委は
  「調査にはプラス面もあり、復興と文化財保護は両立しなければならない。
  そのためにも人員不足は早期に解消する必要がある」
  引用:読売新聞(2012/11/14)

 
発掘期間の短縮へ

 遺跡調査が長引けば、災害公営住宅や防災集団移転事業といった、住宅再建への
 土地造成が大幅に遅れることになります。復興の遅れは人口流出にもつながり
 かねないので、調査区域の縮小や、被災者参加の協力、外部からの職員派遣など
 調査の早期完了に向けての動きがあります。

 
  宮城県教育委員会、発掘基準を弾力運用
   県教委によると、復興事業で埋蔵文化財調査が必要な場合、「全面を掘る」としている
   調査基準を緩和し、原則的に工事で壊される範囲のみの調査を実施する。
   引用:河北新報(2012/3/27)

 
  被災者が発掘調査に協力
   大船渡市三陸町越喜来の崎浜地区の防災集団移転促進事業による高台移転
   移転候補地。同地区で見つかった中野遺跡の発掘現場では地域の復興を前に
   進めようと被災者も参加。慣れない発掘作業に従事しています。
   参考:岩手日報(2012/11/17)

 
  発掘専門職員の派遣
   文化庁は9月下旬、従来は都道府県と政令市のみに通知していた派遣募集に、
   政令市以外の市にも照会するよう都道府県に求める一文を新たに加えた。
   今月下旬に結果がまとまるが、要望は被災3県で約70人に上る。
   引用:読売新聞(2012/11/14)

 
 
  2013年度以後は災害公営住宅の整備や防災集団移転促進事業での土地造成が
  本格的になってくるため、専門職員の増援や、さらなる制度の弾力運用、
  規制緩和等が求められています。

 
 

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One Response to 復興の遅れ:埋蔵文化財の調査で遅れる工事の着工

  1. 匿名 says:

    これまで埋蔵文化財などの歴史や地誌などをきちんと見つめていれば今回のような被害は軽減できた面を忘れてはいけないと思います

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